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剣士×コックの非公式同人サイトです。はじめてお越しいただいた方はfirstを御一読頂きますようよろしくお願い致します。

   
カテゴリー「ss」の記事一覧
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◇表記のないものは全てZ×Sです。
◇19だったり、21だったり。メリーだったり、サニーだったりいろいろです。
R→18禁(ぬるいですがR表現有り。お気を付け下さい)



↓new ↑old

delizioso・・・弱気なサンジ。うっすら485話絡み。

せつな・・・最後のキス。

pandora・・・サンジ+ロビン。パンドラの箱を開けた先には。

undercover(R)・・・秘めた想い。呑み込んだはずの言葉。

わがまま・・・ゾロを庇ったサンジ。サンジのわがまま。

太陽の花・・・深夜のサンジとナミ(ZS、L←N前提)ちょっぴり弱気なナミと励ますサンジ

ゆーきやこんこん・・・サニーの上で雪見酒。


◇お題◇
君に言えなかったことがある5題 ◦

1.君にそばにいて欲しかったこと
2.君に謝りたかったこと
3.君と離れたくなかったこと
4.君にお礼を言いたかったこと
5.君が好きだということ


◇連載中◇

◆コバルトブルーの深淵・・・船番中敵襲に遭ったサンジと、居合わせたゾロ。
(話がまとまらなくなったので一時下げます)




お気に召しましたらポチリと頂けるとうれしいです
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嵐の夜は、落ち着かない。



荒れ狂う波が、
吹きすさぶ風が、
叩き付ける様な雨が、
小さな船の船体をギシギシと軋ませる。


サンジは明りを落としたラウンジのテーブルに突っ伏していた。
少し前までペンを走らせていたレシピノートと食材の管理用のノートは、
開いたまま、傍らに放置されている。
長年愛用している万年筆も、キャップを閉じることもせずノートの横に転がったままだ。
細い紫煙を立ち昇らせる煙草は、ほとんど吸われることなく、
灰皿の上でそのほとんどがが灰の塊と化している。


ピカッと薄暗いラウンジを黄色い光が一瞬照らしたかと思うと、
直後、ドォンと大きな雷鳴が轟く。

テーブルに伏したまま、ぎゅっと耳を塞ぐ。


嵐が呼び起こすのは、サンジの心の中で未だじくじくと膿み、
鮮血を流し続けている傷口だ。
パックリと口を開け、決して閉じることのないそれは、
時折その存在を誇示するかのように悲鳴を上げる。


9年前のあの日から、それは嵐の度にサンジを苦しめ続ける。


バタンと音を立てて扉が開いた。

顔を上げると、仏頂面の剣士がずぶ濡れで立っていた。
そういえば、今日の不寝番はこいつだったかもしれない。
ポタポタと滴を零したまま、扉も締めずに立ち尽くしている。

吹き込む風に、雨が混じって開いたままのノートにポツポツと染みを作った。


「とっとと閉めやがれ。雨が入んだろうが」

口内は乾ききり、ひび割れた唇はうまく言葉を紡げず、
どこかしたっ足らずのようになり、
揚句、声はひどく掠れていたけれど、
剣士には伝わったようで、バタリと扉が閉められた。


「水、もらう」


言いながら棚のグラスを取ると、冷蔵庫からボトルを取り出した。

トプトプと水が注がれる音の後、
喉が水を飲み下す音が、雨音の合間に響いた。


ピカッと再び空が光った。
瞬間浮かび上がった剣士のシルエットが、
やけにくっきりサンジの脳裏に刻みこまれる。


ゴロゴロと小さく唸った後、
ドォンと今までで一番の雷鳴が鳴り響く。


「・・・っ」


反射的に耳を塞いだサンジを、剣士のシルエットが見下ろす。
ピカッと三度の光に、鳶色の双眸が金色に光った。

僅かに小さく身を縮ませたサンジを一瞥すると、
剣士は何も言わず、土砂降りの甲板へと戻って行った。

扉が閉まった直後、ドォンと雷鳴が船をビリビリと震わせる。



サンジは再びテーブルに伏した。


それでいい。
下手な情けや憐みなど、
まして、剣士になど死んでもかけられたくない。


ゆっくりと瞳を閉じる。


それでも。
例えば、もし。
求めたら、剣士は自分の傍にいてくれただろうか。
髪を撫で、手を握り、頬を包み、
鮮血をこぼし続ける傷口をやさしく辿ってくれただろうか・・・。



バカバカしい夢想は、
何度目かもわからない雷鳴が掻き消した。














「さむくねェの?」



明日の仕込みを終え、甲板に出ると、
芝生の上で酒盛りをする緑の頭に声をかける。


「たまにゃァいいだろ」

右手に持っていた白いお猪口を目の前に翳す。
お猪口に並々注がれた酒から、薄い湯気がゆらりと立ち昇る。

「雪を見ながらの熱燗は、風情があって」

お猪口の上に、ひらりと淡雪が舞い、溶けて行く。
その様を愛でるように眺めると、クイっと一息に煽る。

「・・・まぁな」

サンジは薄く積もった雪をさっと軽く払うと、ゾロの隣に腰を下ろした。

「ほらよっ。つまみと追加の酒だ」

サンジが持ってきた盆の上には、
大根、牛スジ、タコ、ちくわぶ、こんぶが煮込まれたおでんと、
アツアツに燗を付けた米の酒が入った徳利が乗せられている。

「ん」

「おぉ」

空になったゾロの手元を顎でしゃくると、
出されたお猪口に酒を足してやる。


「お前も飲むだろ?」

ゾロはサンジから徳利を取り上げると、
サンジの目の前で徳利をゆらゆらとゆらす。

サンジは「もちろん」と言って、口の端をニっと上げた。





「キレーだなぁ」


いい具合に酒がまわって、頭がふわふわする。
寒いはずなのに、酒がまわってほてった体には、
時折肌の上で溶ける雪の冷たさも心地よい。
芝生の上に大の字に寝転がって空を見上げる。

はらり、はらりと桜の様に舞い散る雪は、積もるには淡く、
舞い落ちた途端に溶けてしまう。
けれど、それでも僅かずつでも世界を銀色に染めて行く。


「顔に雪が積もるぞ」

どこか呆れたような笑みを浮かべながら、
寝転がったサンジの頬をゆるりと撫でてくる。

「へへ。手、あったけーな~」

ごろんと転がってゾロの方に体を向け、
頬に乗せられたゾロの手にすり寄る。
乗せられたゾロの手を包むように自身の手を重ねる。


「・・・おれさ、雪ってキライだったんだ」

しんしんと降り積もる雪に、サンジは陰鬱な思い出しかない。
あたたかな太陽の光を遮り、青空を塞ぐ灰色の雲。
厚い雲を通して注がれる陽光は、冷え切った空気をあたためるには弱すぎて、
寒々しく静まり返ったモノクロの街並みに降り注ぐ雪は、
何もかもを白く覆いつくし、閉ざしてしまう。


「・・・でも、こんな雪ならいいなって」


儚く散りゆく桜の花のように、
はらりと舞っては溶け行く淡雪に、
みるのは、人の夢のはかなさか、命のはかなさか・・・。
塞ぎ込んだ群青の思い出と相まって、
感傷的に、そんなものを見ながら傾ける酒杯はキライだったけれど、
ゾロの、雪を見つめるやわらかな瞳に、
そんなに悪いものでもないかと思い出したのだ。



「おれの育った村では、冬になって雪が積もるとかまくらを作んだ」

「カマクラ?」

「雪で作った窯だ。その中にゴザ敷いて、鍋食ったり、みかん食ったり」

「楽しそうだな」

「大人は酒も飲んでたな。甘酒くれぇなら飲ましてもらえることもあったっけな」



降りゆく雪にゾロが思いを馳せるのは、
あたたかな故郷の情景だろう。

「年に何度も積もるもんじゃなかったが、みんな楽しみにしてたな」

ゾロは故郷を懐かしみ、優しげに目を細める。
彼の見つめる先には、どんな光景が広がっているのだろうと思う。



「・・・おれも、カマクラ作りてーな」

「こんな雪じゃ無理だぞ。もっと、ドラムくらい積もらねェと」

やっとうっすらと白く積もり出した雪を見ながら、
ゾロがおかしそうに笑う。
「そんなん分かってるよっ」
と少しふてくされたように言うと、さらにゾロが笑う。


ゆ~きやこんこん
あ~られやこんこん
降っても降ってもまだふりやまぬ


雪の日にバラティエに来た子供が歌っていた歌を口ずさむ。
イーストでは有名な歌なのだろう、
バラティエで、買い出しに出た街で、
何度も聞くたび、耳慣れなかったはずの歌もいつのまにか覚えてしまった。
あの子供たちも、うれしそうに窓の外を眺めていたっけ。


「懐かしいな、その歌」

言いながらゾロはお猪口を傍らに置くと、
サンジの隣に横になる。
片腕をサンジの腰にまわすと、引き寄せるように抱き込む。


いーぬはよろこび
にわかけまわる


「・・・ヘタクソ」

「・・・っウルセー」

小さく続きを歌ったゾロが、なんだか無性におかしくて、
ゾロの腕の中でクスクスと笑った。




「・・・雪、キレーだな」

「あぁ。綺麗だ」

ゾロの腕に抱き込まれたまま、サンジは空を見上げる。
僅かに漏れる月明かりに照らされて、
雪はキラキラと輝きだす。
たとえ、消えゆくと分かっていても、
その一瞬を焼き付ける様に輝く淡雪。


「次は、かまくらだな」

「あぁ。カマクラ。約束だからな」

「あぁ。約束だ」


ゆびきりの代わりに
溶け行く雪の様に、淡い思いを乗せて
唇をあわせた






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本当は先週の東京初積雪の日に書こうとした話。
ただ、2人にゆ~きやこんこんを歌わせたかっただけw
自分的にはすげー甘い話になってなんかかゆかったですw
なんとなく、サンジの生まれた日は雪が降っていたんじゃないかな~と思いながら書きました。




  
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2013/07/21・・・ssに1点up
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