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剣士×コックの非公式同人サイトです。はじめてお越しいただいた方はfirstを御一読頂きますようよろしくお願い致します。

   
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わがまま


もしも。
オレが死んだとして。

”ああしてやればよかったな”とか。
”こうしてやればよかったな”とか。
そんな変な気遣いみたいなのはいらない。
後悔なんて、そんな腹の足しにもならねぇようなもん欲しくはない。

感情をあまり表に出さないお前の、
小さな小さなやさしさを、
1つだってこぼさないようにするから。
どんな小さな出来事も、
この胸に抱いて、忘れないから。

ただ、此の時を愛して。









目が覚めると、見慣れたメリーの天井だった。
丸窓から漏れるのは僅かな月明かりで、今が少なくとも昼間ではないと分かる。

起き上がろうと力を込めると、全身に激痛が走り、
体を数cm浮かせたのみで、ベッドへ逆戻りした。

痛みに一気に覚醒する頭。


そうだ。
敵襲があったのだ。
あれは、ちょうど昼食を作り終えたくらいだったはず。
一番に応戦したルフィとゾロ。
それにすぐに加勢したはずだ。
それで・・・・・。



ガチャリと扉が開く。
音のした方に目を向けると、緑髪の剣士が立っていた。


「・・・コック」

小さく呟くように言うと、サンジの傍に歩んできた。
手には湯が入っているのか、湯気の立ち昇るタライと、
タオルを抱えている。


「目、覚めたか」

いつもとは違う、どこか悲壮な声と眼差し。

「・・・オレ」

「覚えてるか・・・」

「・・・あぁ」

ゾロの静かな声に、一気に記憶が蘇る。



そうだ。
自分は庇って傷を負ったのだ。

この、剣士を。



「・・・悪かった」

静まりかえった室内に、ゾロの低い声が響く。

「謝るなよ」

そう言いながら、サンジは上体を起こそうと腕と腹に力を込めた。
上半身に分厚く巻かれた包帯の下にあるであろう傷に激痛が走る。

「お前っ、まだ寝てろって・・・」

ゾロの制止を無視して、痛みを噛み殺しながらなんとか上半身を起こした。
たったそれだけの動作で、息は上がり、額にどっと脂汗が滲み、
この包帯の下の傷が決して軽くないことを思い知らされる。

ゾロの日に焼けた腕が伸びてきて、節くれだった武骨な指で、
サンジの額に滲んだ汗を拭う。

そのまま、ゾロの分厚い体が、サンジの体をガラス細工でも扱うように優しく包んだ。

「・・・なぁ。オレはどれくらい寝てた?」

問いながら、子供をあやすようにゾロの背中を撫でる。

「・・・3日だ」

「そうか」

ゾロはサンジを包んでいた腕を少し緩めると、
乾燥してひび割れた唇にキスを落としてきた。
絡めあう舌が、やけどでもしそうな程ジンジンと熱い。

「ゾロ」

名残惜しげに唇を離すと、ゾロは再びサンジの体を両腕で包む。

「ゾロ・・・・悪かった」




あの時。

サンジが敵船との戦闘に加勢に行った時には、すでに大半が倒れていたのだ。
いくら数が多いとはいえ、ルフィとゾロの力の前には、最早虫けらも同然。
加え、相手の船長はよくもこれで一船の船長をやっていたなと思う程、
意気地も、根性も、覚悟もない奴だった。
仲間の大半がやられ、自分の命も危ういと判断するやいなや、
ありったけの宝を差し出し、これで命は勘弁してもらいてェと懇願してきた。
一部始終をサニーの上から見ていたナミが、
お宝だけもらってさっさと戻ってきなさいと指示を出す。
ルフィもゾロも、こんな誇りもクソもない奴を打ち負かした所で、
なんの特にもならないと判断し、ナミの指示に従った。

手分けして差し出してきた宝を持ち帰ろうとしていた所に、
敵船の一人が向かってきたのだ。
未だ若い、血気盛んそうな青年にも満たないような男は、
すでにゾロに斬られでもしたのか、全身血塗れで、
それでも尚、両手に宝を抱えサニーに飛び移ろうとしたゾロの背に向かって、
短刀を両手に携え、飛び込んできた。

咄嗟に体が動いたのだ。

ゾロの背中に突き刺さるはずだった、男の振り下ろした二振りの短刀は、
ゾロを庇い、間に入ったサンジの両胸を貫いた。


ルフィの叫び声が、
ナミの悲鳴が響く。


飛びかかってきた男の勢いで、胸に二振りの刀を突き刺したまま、
サンジの体は、船の外へと放り出された。

落ちて行く景色が、スローモーションのように流れて行く中、
伸ばされた日に焼けた腕が、虚しく空を切るのだけが、
やけに鮮明に焼き付いていた。






「・・・怒る・・・よな」


負けるくらいなら、死んだ方がマシ。
そういう奴だ。
自分の行動は、こいつの自尊心をきっと傷つけただろう。


自分はたぶん、優しくなんかない。

残される痛みを、
誰かの犠牲の上に生きる苦しみを、
誰よりも分かっているはずなのに、
自分はいったい何度愛する者を残そうとしただろう。
何度、犠牲の上に立たせようとしただろう・・・。
頭では分かっていても、結局自分はこういうやり方しかできないのだ。
ゼフによって施された、これ以上ない程やさしく、けれどこれ以上ない程残酷な呪いを、
断ち切る強さを、サンジは未だ持てずにいる。



「何言ってんだ・・・てめェ」

サンジを包むゾロの腕に僅かに力が籠る。

「・・・何で庇ったりしたっ」

押し殺すような声は、まるで泣いているかのように震えている。


「・・・背中が」

どこもかしこも傷だらけのこの男の体において、唯一。

「お前の、背中」

歩んできた道程、胸に掲げた信念。
この男の全てをうつしたような、まっさらな。

「傷がつくのが・・・」

あんなからっぽの奴らに穢されるのが。
まっすぐに生きてるお前の、
このキレイな背中が踏み躙られるのが。

「・・・許せなかった」



男同士なのに、心も体も許し、愛し合う、
そういう仲だけれど、
それと同時に、サンジはゾロを一人の男として惚れ、尊敬しているのだ。
だから、

男として、
仲間として、
恋人として、

この男の背中を守りたかった。



「・・・アホが」

サンジの首元に埋めたゾロの声が一際震えた。
生温かいぬくもりが、サンジの肩に零れ落ちる。


「・・・悪かった」

「・・・約束しろ。もう二度と、こんな真似はするなっ」


ゾロの言葉に、無言で抱きしめ返す。




約束は、たぶんできない。

オレはわがままで、自分勝手だ。
もし、また愛した者の誇りが、信念が、命が奪われそうな時は、
きっと自分は同じ行動をとってしまうだろう。
甘美な呪いの連鎖を断ち切れない自分は、
そういうやり方しか、できない。

だから、これはオレのわがままなんだ。

それでも、後悔や、気遣いや、懺悔なんかいらないと。
オレは、お前がくれた至上のやさしさや、愛。
それだけでしあわせなのだから。



わがままなおれを、どうかゆるして。








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◇大好きな某曲の歌詞を、そのままではないですが冒頭に使わせて頂きました。
ちょびっと弱いゾロが書いてみたかったんです。
そして、相変わらずうちのサンジは怪我してばっかですいませんw




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