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ゆーきやこんこん


「さむくねェの?」



明日の仕込みを終え、甲板に出ると、
芝生の上で酒盛りをする緑の頭に声をかける。


「たまにゃァいいだろ」

右手に持っていた白いお猪口を目の前に翳す。
お猪口に並々注がれた酒から、薄い湯気がゆらりと立ち昇る。

「雪を見ながらの熱燗は、風情があって」

お猪口の上に、ひらりと淡雪が舞い、溶けて行く。
その様を愛でるように眺めると、クイっと一息に煽る。

「・・・まぁな」

サンジは薄く積もった雪をさっと軽く払うと、ゾロの隣に腰を下ろした。

「ほらよっ。つまみと追加の酒だ」

サンジが持ってきた盆の上には、
大根、牛スジ、タコ、ちくわぶ、こんぶが煮込まれたおでんと、
アツアツに燗を付けた米の酒が入った徳利が乗せられている。

「ん」

「おぉ」

空になったゾロの手元を顎でしゃくると、
出されたお猪口に酒を足してやる。


「お前も飲むだろ?」

ゾロはサンジから徳利を取り上げると、
サンジの目の前で徳利をゆらゆらとゆらす。

サンジは「もちろん」と言って、口の端をニっと上げた。





「キレーだなぁ」


いい具合に酒がまわって、頭がふわふわする。
寒いはずなのに、酒がまわってほてった体には、
時折肌の上で溶ける雪の冷たさも心地よい。
芝生の上に大の字に寝転がって空を見上げる。

はらり、はらりと桜の様に舞い散る雪は、積もるには淡く、
舞い落ちた途端に溶けてしまう。
けれど、それでも僅かずつでも世界を銀色に染めて行く。


「顔に雪が積もるぞ」

どこか呆れたような笑みを浮かべながら、
寝転がったサンジの頬をゆるりと撫でてくる。

「へへ。手、あったけーな~」

ごろんと転がってゾロの方に体を向け、
頬に乗せられたゾロの手にすり寄る。
乗せられたゾロの手を包むように自身の手を重ねる。


「・・・おれさ、雪ってキライだったんだ」

しんしんと降り積もる雪に、サンジは陰鬱な思い出しかない。
あたたかな太陽の光を遮り、青空を塞ぐ灰色の雲。
厚い雲を通して注がれる陽光は、冷え切った空気をあたためるには弱すぎて、
寒々しく静まり返ったモノクロの街並みに降り注ぐ雪は、
何もかもを白く覆いつくし、閉ざしてしまう。


「・・・でも、こんな雪ならいいなって」


儚く散りゆく桜の花のように、
はらりと舞っては溶け行く淡雪に、
みるのは、人の夢のはかなさか、命のはかなさか・・・。
塞ぎ込んだ群青の思い出と相まって、
感傷的に、そんなものを見ながら傾ける酒杯はキライだったけれど、
ゾロの、雪を見つめるやわらかな瞳に、
そんなに悪いものでもないかと思い出したのだ。



「おれの育った村では、冬になって雪が積もるとかまくらを作んだ」

「カマクラ?」

「雪で作った窯だ。その中にゴザ敷いて、鍋食ったり、みかん食ったり」

「楽しそうだな」

「大人は酒も飲んでたな。甘酒くれぇなら飲ましてもらえることもあったっけな」



降りゆく雪にゾロが思いを馳せるのは、
あたたかな故郷の情景だろう。

「年に何度も積もるもんじゃなかったが、みんな楽しみにしてたな」

ゾロは故郷を懐かしみ、優しげに目を細める。
彼の見つめる先には、どんな光景が広がっているのだろうと思う。



「・・・おれも、カマクラ作りてーな」

「こんな雪じゃ無理だぞ。もっと、ドラムくらい積もらねェと」

やっとうっすらと白く積もり出した雪を見ながら、
ゾロがおかしそうに笑う。
「そんなん分かってるよっ」
と少しふてくされたように言うと、さらにゾロが笑う。


ゆ~きやこんこん
あ~られやこんこん
降っても降ってもまだふりやまぬ


雪の日にバラティエに来た子供が歌っていた歌を口ずさむ。
イーストでは有名な歌なのだろう、
バラティエで、買い出しに出た街で、
何度も聞くたび、耳慣れなかったはずの歌もいつのまにか覚えてしまった。
あの子供たちも、うれしそうに窓の外を眺めていたっけ。


「懐かしいな、その歌」

言いながらゾロはお猪口を傍らに置くと、
サンジの隣に横になる。
片腕をサンジの腰にまわすと、引き寄せるように抱き込む。


いーぬはよろこび
にわかけまわる


「・・・ヘタクソ」

「・・・っウルセー」

小さく続きを歌ったゾロが、なんだか無性におかしくて、
ゾロの腕の中でクスクスと笑った。




「・・・雪、キレーだな」

「あぁ。綺麗だ」

ゾロの腕に抱き込まれたまま、サンジは空を見上げる。
僅かに漏れる月明かりに照らされて、
雪はキラキラと輝きだす。
たとえ、消えゆくと分かっていても、
その一瞬を焼き付ける様に輝く淡雪。


「次は、かまくらだな」

「あぁ。カマクラ。約束だからな」

「あぁ。約束だ」


ゆびきりの代わりに
溶け行く雪の様に、淡い思いを乗せて
唇をあわせた






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本当は先週の東京初積雪の日に書こうとした話。
ただ、2人にゆ~きやこんこんを歌わせたかっただけw
自分的にはすげー甘い話になってなんかかゆかったですw
なんとなく、サンジの生まれた日は雪が降っていたんじゃないかな~と思いながら書きました。




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