忍者ブログ

剣士×コックの非公式同人サイトです。はじめてお越しいただいた方はfirstを御一読頂きますようよろしくお願い致します。

   
カテゴリー「ss」の記事一覧
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




「好きになったのが、サンジくんだったらよかった」


深夜、クルーが寝静まり静かなサニー号。
唯一明りの灯るラウンジで、
ナミはブランデーの入ったグラスをゆらゆらと弄びながら、
ポツリと独り言のように呟いた。

「・・・そしたら、もっと楽だったのにって思うのよ」

「じゃあ、付き合っちゃう?」


いつも通りのサンジの軽口も、この時間では少し色を変える。
虚飾めいた、どこか上滑るような響きとは違う。
ナミがYESと答えたら、本当にそうなってしまいそうな。

「・・・バカ言わないで」

ナミは甘ったるくなりそうな空気を打ち消すように、
わざと大袈裟につまらなそうに言った。

こういう時のサンジはダメだ。

普段のサンジは、女と見れば見境なくメロメロになって、
今時少女マンガでも言わないような、
よくも素面で吐けるなと思う程甘い言葉を並べ立てる。

サンジは客観的に見ればイイ男だと思う。
もちろん、喋らなければの話だが・・・。
ナミは四六時中サンジから前述の口説き文句を吐かれるのだけれど、
なぜかサンジのことを”男”として意識することがほとんどない。
なぜだろうと考え、それはサンジがナミをはじめとする女という生き物を、
神格化しているからだと思ったのだ。
もちろんサンジとて、女を抱いた事くらいあるだろうし、
女の汚い部分も知ってはいるのだろうが、
それを知った上で、神格化するのだ。
サンジの中で女とは、女であるというだけで美しく、尊いものなのだろう。
だからか、サンジの言葉には男なら当たり前にある性的な情欲があまり感じられないのだ。
故に、ナミもまたサンジを男として意識しないのだ。


ナミはたまに寝付けない時に、こうして深夜のラウンジで酒杯をかたむける。
よっぽど遅い時間でない限り、サンジがいるので、
お酒を飲みながらサンジと他愛無いおしゃべりをするのだが、
時折、サンジが妙な色気を纏っている時がある。
そういう時のサンジは、普段の軽薄さはなりを潜め、
普段は口から生まれたのかと疑いたくなる程に、おしゃべりで騒々しいのが、
本当に同じ男なのかと疑いたくなるくらい、凪いだ海のように静かな空気を纏う。
そんな時、ナミはサンジのことを”嗚呼、この人も男なのだ”と思い知らされるのだ。
骨ばって血管の浮く大きな手の甲だとか、
筋肉に覆われ引き締まった腕だとか、
パリっとした清潔なシャツに覆われた厚い胸板や、
声を発する度コクリと動く隆起した喉仏だとか。
普段は目が行かないような所にばかり目が行ったりする。
「この人は自分をどう抱くだろう・・・」
などと、決して普段は思いもしないことを考えてしまう時もある。


「オレはナミさんのこと好きだけど?」

サンジは言いながら、ラムに浸け込んだレーズンを混ぜたビターチョコを口に運ぶ。
赤い舌がちろりと覗いて、ナミの背が僅かにゾクリとする。

「でも、愛してるじゃないでしょ」

ナミが弄んでいたブランデーを一口含んでから、
自分に確認し、言い聞かせるように言うと、
サンジは否定とも肯定とも取れない曖昧な笑みを浮かべた。

「・・・オレも、隣にいるのがナミさんだったらいいのにって思うよ」

サンジが少し顔を傾げると、耳にかけていた金糸がさらりと頬に落ちる。
白い頬にかかる金のコントラストに目が釘付けになる。

「オレだったら、愛しのナミさんに、こんな風にさみしい思いさせないのに」

それまでの、どこか艶めいた空気を打ち破るように、
唐突に、普段の軽口に戻るサンジに、
ナミは縫い止められていた視線を手元のブランデーに戻す。

「・・・アイツは、太陽だから」

琥珀色の湖面に、ランタンの灯が映って丸い明りがゆらりと揺れる。

思い浮かべるのは、目眩い程に輝く太陽。
どんな時にも強く、時に強引に照らしつける。
あらゆるものを魅了するその光。

「どんなに必至で手を伸ばしても届かないし、
見つめようとしても、眩し過ぎて見つめられない」

焦がれても、焦がれても。
決して手に入らない。



「・・・あいつが太陽なら、ナミさんはひまわりだよ」

「ひまわり?」

「いつでも太陽の方を向いて、光を浴びてキラキラ輝く」

サンジの落ち着いたアルトが続く。

「雨に打たれて、風に晒されて、
それでも健気に太陽を信じて、まっすぐに太陽に向かって生きてる」

いつもの、甘ったるい口説き文句と変わらぬ言葉のはずなのに、
それはナミの心をふわりと包む。
雨の空に、虹がかかるように。

「オレはそんなひまわりが大好きだよ」

ナミは歪んだ視界を誤魔化すように、ブランデーを呷る。

「・・・バカ」

消え入りそうな声で呟いたのは、
精一杯の強がり。





ふいに、ガチャリと部屋のドアが開く。

「・・・酒、もらう」

それまでの空気を打ち砕くように、
ゴツゴツとしたブーツの音と共に、緑髪の剣士が入ってくる。

「もーお前なんなんだよ。オレとナミさんのらぶらぶタイムを邪魔しやがって」

いよいよ普段通りの、騒々しい口調へと戻るサンジ。
つい先刻までのやわらかな目元も、いつものチンピラのような悪さに戻っている。

「へぇへぇ」

サンジの言葉に、適当に返事をしながら酒棚へまっすぐ向かう。

「左の棚の真ん中の段だけだぞ。あと、ちゃんとグラスで飲めよな」

「いちいちうるせーな」

「うるせーとはなんだよマリモが。お前は反抗期の子供かっ」

ガヤガヤといつもの言い合いを始めた二人に、ナミはくすりと笑う。
ケンカをしているのに、その空気はあたたかい。

「アンタたちは、海と空ね」

「へ?」
「ハァ?」

ナミの言葉に、二人が言い合いを止め、頓狂な声をあげる。
そんな二人を尻目に、ナミはカタリとイスから立った。

「なんでもないわ。私、そろそろ寝るわね」

「あ、あぁ。おやすみ。あ、グラスそのままでいいよ」

「ありがとう。サンジくん」

呑み始める時には暗く落ち込んでいた心が、いつの間にか晴れている。
素直に、付き合ってくれたサンジに対する感謝の言葉と、
同時にナミの心に小さなイタズラ心がともる。
イスから立ち上がり、サンジに近付く。

「ゾロの甲斐性がなくなったら、私がいつでも相手してあげるからね」

「っっ!!!!」

言いながら、サンジの頬に手を添えると、さらりとした髪の毛にキスをした。

すぐに離れたナミのくちびるを目で追いながら、
サンジは真っ赤な顔で口をパクパクさせている。
その奥で、ゾロが唖然として口を半開きにしていたが、
すぐにどこか拗ねたような顔でふいっと視線を逸らせた。
普段は大人びて、あまり感情を表に出さないゾロのそんな子供じみた姿がおかしくて、
ナミは一人、笑い出しそうになるのを堪えながら、女部屋へと向かった。






----------------------------------------------------------------------------
一応ゾロサン、ル←ナミ前提です。
ナミしかり、ロビンしかり。
サンジと女性キャラの絡み(ゾサ前提)がすごく好きです。
これだけで普通に終わる予定が、拗ねたゾロがかわいそうだったのでw
ナミ退出後のゾロサン(R。むしろヤってるだけw)を近々up予定です。








PR


もしも。
オレが死んだとして。

”ああしてやればよかったな”とか。
”こうしてやればよかったな”とか。
そんな変な気遣いみたいなのはいらない。
後悔なんて、そんな腹の足しにもならねぇようなもん欲しくはない。

感情をあまり表に出さないお前の、
小さな小さなやさしさを、
1つだってこぼさないようにするから。
どんな小さな出来事も、
この胸に抱いて、忘れないから。

ただ、此の時を愛して。









目が覚めると、見慣れたメリーの天井だった。
丸窓から漏れるのは僅かな月明かりで、今が少なくとも昼間ではないと分かる。

起き上がろうと力を込めると、全身に激痛が走り、
体を数cm浮かせたのみで、ベッドへ逆戻りした。

痛みに一気に覚醒する頭。


そうだ。
敵襲があったのだ。
あれは、ちょうど昼食を作り終えたくらいだったはず。
一番に応戦したルフィとゾロ。
それにすぐに加勢したはずだ。
それで・・・・・。



ガチャリと扉が開く。
音のした方に目を向けると、緑髪の剣士が立っていた。


「・・・コック」

小さく呟くように言うと、サンジの傍に歩んできた。
手には湯が入っているのか、湯気の立ち昇るタライと、
タオルを抱えている。


「目、覚めたか」

いつもとは違う、どこか悲壮な声と眼差し。

「・・・オレ」

「覚えてるか・・・」

「・・・あぁ」

ゾロの静かな声に、一気に記憶が蘇る。



そうだ。
自分は庇って傷を負ったのだ。

この、剣士を。



「・・・悪かった」

静まりかえった室内に、ゾロの低い声が響く。

「謝るなよ」

そう言いながら、サンジは上体を起こそうと腕と腹に力を込めた。
上半身に分厚く巻かれた包帯の下にあるであろう傷に激痛が走る。

「お前っ、まだ寝てろって・・・」

ゾロの制止を無視して、痛みを噛み殺しながらなんとか上半身を起こした。
たったそれだけの動作で、息は上がり、額にどっと脂汗が滲み、
この包帯の下の傷が決して軽くないことを思い知らされる。

ゾロの日に焼けた腕が伸びてきて、節くれだった武骨な指で、
サンジの額に滲んだ汗を拭う。

そのまま、ゾロの分厚い体が、サンジの体をガラス細工でも扱うように優しく包んだ。

「・・・なぁ。オレはどれくらい寝てた?」

問いながら、子供をあやすようにゾロの背中を撫でる。

「・・・3日だ」

「そうか」

ゾロはサンジを包んでいた腕を少し緩めると、
乾燥してひび割れた唇にキスを落としてきた。
絡めあう舌が、やけどでもしそうな程ジンジンと熱い。

「ゾロ」

名残惜しげに唇を離すと、ゾロは再びサンジの体を両腕で包む。

「ゾロ・・・・悪かった」




あの時。

サンジが敵船との戦闘に加勢に行った時には、すでに大半が倒れていたのだ。
いくら数が多いとはいえ、ルフィとゾロの力の前には、最早虫けらも同然。
加え、相手の船長はよくもこれで一船の船長をやっていたなと思う程、
意気地も、根性も、覚悟もない奴だった。
仲間の大半がやられ、自分の命も危ういと判断するやいなや、
ありったけの宝を差し出し、これで命は勘弁してもらいてェと懇願してきた。
一部始終をサニーの上から見ていたナミが、
お宝だけもらってさっさと戻ってきなさいと指示を出す。
ルフィもゾロも、こんな誇りもクソもない奴を打ち負かした所で、
なんの特にもならないと判断し、ナミの指示に従った。

手分けして差し出してきた宝を持ち帰ろうとしていた所に、
敵船の一人が向かってきたのだ。
未だ若い、血気盛んそうな青年にも満たないような男は、
すでにゾロに斬られでもしたのか、全身血塗れで、
それでも尚、両手に宝を抱えサニーに飛び移ろうとしたゾロの背に向かって、
短刀を両手に携え、飛び込んできた。

咄嗟に体が動いたのだ。

ゾロの背中に突き刺さるはずだった、男の振り下ろした二振りの短刀は、
ゾロを庇い、間に入ったサンジの両胸を貫いた。


ルフィの叫び声が、
ナミの悲鳴が響く。


飛びかかってきた男の勢いで、胸に二振りの刀を突き刺したまま、
サンジの体は、船の外へと放り出された。

落ちて行く景色が、スローモーションのように流れて行く中、
伸ばされた日に焼けた腕が、虚しく空を切るのだけが、
やけに鮮明に焼き付いていた。






「・・・怒る・・・よな」


負けるくらいなら、死んだ方がマシ。
そういう奴だ。
自分の行動は、こいつの自尊心をきっと傷つけただろう。


自分はたぶん、優しくなんかない。

残される痛みを、
誰かの犠牲の上に生きる苦しみを、
誰よりも分かっているはずなのに、
自分はいったい何度愛する者を残そうとしただろう。
何度、犠牲の上に立たせようとしただろう・・・。
頭では分かっていても、結局自分はこういうやり方しかできないのだ。
ゼフによって施された、これ以上ない程やさしく、けれどこれ以上ない程残酷な呪いを、
断ち切る強さを、サンジは未だ持てずにいる。



「何言ってんだ・・・てめェ」

サンジを包むゾロの腕に僅かに力が籠る。

「・・・何で庇ったりしたっ」

押し殺すような声は、まるで泣いているかのように震えている。


「・・・背中が」

どこもかしこも傷だらけのこの男の体において、唯一。

「お前の、背中」

歩んできた道程、胸に掲げた信念。
この男の全てをうつしたような、まっさらな。

「傷がつくのが・・・」

あんなからっぽの奴らに穢されるのが。
まっすぐに生きてるお前の、
このキレイな背中が踏み躙られるのが。

「・・・許せなかった」



男同士なのに、心も体も許し、愛し合う、
そういう仲だけれど、
それと同時に、サンジはゾロを一人の男として惚れ、尊敬しているのだ。
だから、

男として、
仲間として、
恋人として、

この男の背中を守りたかった。



「・・・アホが」

サンジの首元に埋めたゾロの声が一際震えた。
生温かいぬくもりが、サンジの肩に零れ落ちる。


「・・・悪かった」

「・・・約束しろ。もう二度と、こんな真似はするなっ」


ゾロの言葉に、無言で抱きしめ返す。




約束は、たぶんできない。

オレはわがままで、自分勝手だ。
もし、また愛した者の誇りが、信念が、命が奪われそうな時は、
きっと自分は同じ行動をとってしまうだろう。
甘美な呪いの連鎖を断ち切れない自分は、
そういうやり方しか、できない。

だから、これはオレのわがままなんだ。

それでも、後悔や、気遣いや、懺悔なんかいらないと。
オレは、お前がくれた至上のやさしさや、愛。
それだけでしあわせなのだから。



わがままなおれを、どうかゆるして。








---------------------------------------------------------------------------
◇大好きな某曲の歌詞を、そのままではないですが冒頭に使わせて頂きました。
ちょびっと弱いゾロが書いてみたかったんです。
そして、相変わらずうちのサンジは怪我してばっかですいませんw







サンジは海が好きだ。

物心ついた頃には、すでに海の上にいた。
偶に、上陸した島で宿を取って過ごすこともあるが、
街の雑踏や、植物や土のにおいに囲まれた陸は、
未だにどうにも馴染めないと密かに思っている。
波の音が聞こえず、潮のにおいがしないことが、
サンジの体にはしっくりこないのだ。


サンジは海が好きだ。

けれど、同時にひどく憎いと思う時がある。
母なる海は、生命のゆりかごだ。
万物の源。命を産み、育み、癒す。
しかし同時に、海はそれをたやすく奪いもする。
時に鋼鉄の斧を振り下ろす様に。
時に真綿でじわりと絞め殺すように。





深夜。


明日の仕込みを終えたサンジは、
甲板に出て海を眺めていた。
今日は満月だ。
黒い海面に映った月が、ゆらゆらと揺れている。

ふと、背後に気配を感じて振り返ると、
聡明なこの船の考古学者が立っていた。


「ロビンちゃん。どうしたの?こんな時間に」

サンジが問うと、ロビンは僅かに微笑みながら歩を進め、サンジの隣に立った。
艶やかな黒髪がさらさらと靡く。


「お月様が、泣いてる気がしたの」

「月が?」

サンジは空に浮かぶ月を見上げた。
雲一つない真っ暗な空の上で、ポツリと輝く満月。


「なんでもないわ。
さっきまで本を読んでいたのだけれど、なんだか眠れなくなってしまって」

「何かあったかいドリンク淹れようか?ハーブティーとか」

「大丈夫よ。ありがとう」


会話が途切れ、サンジは再び海へと視線を戻した。
ロビンも同じように海を見つめる。



「かわいいお花ね」

サンジの手元には、薄紫色の小さな花が握られていた。
時折風を受けてそよそよと揺れている。

ロビンの言葉に、サンジは持っている花を目の前に掲げ、
どこか哀しげに花を見つめると、おもむろにそのまま海へと投げた。
小さな花は音もなく海面に落ち、絵の具をポトリと落とし込んだように、
黒い波の上に薄紫が浮かんだ。


「手向けだよ」

サンジが漆黒の海を漂う薄紫の花を見つめながら、独り言のようにぽつりと言う。

「海は広くて、大きくて・・・残酷だ」

水飛沫を被った花が、溶けるように徐々に沈んでいく。

「この広い海からしたら、オレらなんか砂漠の砂粒と変わらねェ。
簡単に呑み込めちまうんだ」


「そうね。確かに海は時に残酷ね」

絶え間ないさざなみの間を縫うように、
ロビンの落ち着いたアルトが響く。


「でも、この海があったから私はあなた達に出会えたわ」

海を見つめていたロビンが、サンジの方を振り向く。
つられるように、海に視線を落としていたサンジも顔を上げた。


「パンドラの箱の底には、必ず希望が眠っているものよ」

オハラが地図から消えた日から、
ロビンはただひたすらに、世界から逃げ続けた。
生き抜くために、あらゆるものを犠牲にし、踏みつけ、
傷つけ、傷つけられ、泥水を啜り生きてきた。
安らげる場所などなく、信じられるものなどなかった。
希望なんてなかったし、望んではいけないと思っていた。


けれど、頓に光は降り注いだ。

光はロビンの闇を一層するように照らし、
立ちふさがる壁を薙ぎ払い、
正しい航路へと導き、
時には愉快な笑顔を届けてくれて、
温かい料理でお腹いっぱいにしてくれて、
傷を優しく癒してくれたのだ。
決して手にできないと思っていた全てを与えてくれた。


「見て見ぬふりをして箱を開けずに目を瞑るか、
勇気を出してその箱を開けて、希望を見つけるか、
それはきっと自分次第なんだわ」

ロビンの黒曜石のような漆黒の瞳に、
月の光が浮かび、キラキラと輝く。

「私は、箱を開ける勇気を、あなた達からもらったのよ」

ロビンの端正な明眸が、花のようにふわっとほころぶ。

普段はあまり感情を表に出さないロビンのこんな笑顔がサンジは好きだ。
やっぱり、レディの笑顔はこの世の何にも代えがたく、美しいなと思う。

ロビンの笑顔に、サンジも目尻を下げる。

「オレも一緒だよ。もしルフィたちと出会ってなかったら・・・・。
あの頃のオレは箱に鍵をかけて、隠して、目を背けていたんだ」

何もかもから目を背け、逃げていたあの頃。

「あいつらが、背中を押してくれたんだ」

まばゆい程に輝く光は、
硬く閉じたサンジの心を射抜いたのだ。
痛い程に突き刺さったそれは、サンジに箱を開ける勇気をくれた。


「箱の中は、絶望がしひめいているわ。
傷ついて、泣いて、箱を開けたことを後悔する日もあるかもしれない、
それでも、諦めなければ、箱の底の光を必ず見つけられるわ」

だけど。

「時々なら、泣いてもいいのよ。
前を向いて歩き続けることが全てじゃないわ。
立ち止まって振り返ったっていいのよ」

人はそんなに強くはない。
雨に打たれれば凍えるし、転び、傷つきもする。
歩き続ければ疲れ、一歩も動けなくなってしまう時だってある。

そんな時は。

「辛いときは縋ればいい、泣きたいときは誰かの胸で泣けばいい」

人は一人では生きていけない。
ロビンを救った光はそれを教えてくれた。


「ありがとう。ロビンちゃん」





サンジは海が好きだ。

海はサンジからたくさんのものを奪った。
二度と戻らない平穏な日々。
数多の大切な命。
一つの夢。


けれど。

やっぱりサンジは海が好きだ。

目まぐるしく動く笑顔に溢れた日々。
守りたいと思える仲間。
受け継いだ夢。
それらもまた、海が与えてくれたものだ。

万物が生まれ、還るこの海は全ての源だ。
決して闇だけではない。
闇の向こうには等しく、光があるのだ。


サンジは海が好きだ。







  
last up
2013/07/21・・・ssに1点up
◇ブログは随時更新中

join
参加させていただいています
ゾロサンナビ
ブログ内検索
Copyright ©  -- L'amour est aveugle. --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]